多様な視座から vol 4
✍️「怒る」と「叱る」の境界線 (その②)
第3クォーター。相手の速攻を止めようと、戻った選手が一瞬判断を誤り、ゴール下で簡単にレイアップを許す――。
『何やってんだ!戻れって言ってるだろ!』
ベンチから飛んだその声に、選手の表情が強ばる。コート上に漂う、微かな沈黙。
返ってきたのは『すみません』という蚊の鳴くような声だけだった。
指導者の口をついたのは、選手への指導ではなく、自らの苛立ちだった。
他方、別の現場では、こんな場面があった。
同じような戻りのミス。タイムアウトを取った指導者が選手に静かに語りかける。
『判断が遅れた理由は何だ?疲れてたか?迷ってたか?』
『次、同じ場面でどう動く?』
選手はわずかな沈黙のあと、『次は、相手の目線を見てから予測します』と答えた。
ベンチに戻るその背中は、少しだけ前を向いていた。
選手に考えさせ、次の行動に繋げるための声かけだった。

「怒る」と「叱る」は、似て非なる。
怒る:主語は自分。感情のはけ口になりやすい。
叱る:主語は相手。目的は“成長を促すこと”。
怒られた選手は、心を閉ざす。
叱られた選手は、考え、前を向き、立ち上がる。
もちろん、瞬時の判断が求められる場面で感情をコントロールするのは難しい。
だが、私たち指導者が忘れてはならないのは、「正しさ」だけで人は動かないということだ。
怒鳴られた記憶は、正論よりも「怖かった」が先に来る。
叱られた記憶は、時を経て「自分を見てくれていた」と心に残る。
“正しく伝える”とは、相手の心に「届く形」で届けること。
次に声を出すとき、自らに問いかけたい。
「その声は、選手の未来のためか?」
「余録」
「闘争か逃走(fight or flight)」反応
怒鳴られた子どもは急激にストレスホルモンが分泌され、脳と身体が「待機モード」になります。
その結果、以下のような行動が現れ易いです。
①逃げる(Flight)
□物理的に距離を取る:視線を逸らす、後ずさりする、練習から離れる。
□心理的に距離を取る:心を閉ざす、返事をしない、表情をなくす。
□回避行動:次から同じ場面や人を避ける(練習を休む、意図的に関わらない)
□自己否定:自分はダメだと思い込み、挑戦自体をやめる。

②戦う(Fight)
□反抗的態度:言い返す、舌打ちをする、乱暴な言葉を返す。
□挑発的行動:意図的に指示に従わない、ルールを破る。
□攻撃的プレー:体当たりやラフプレーが増える。
□仲間や他者への八つ当たり:怒りの矛先が周囲に向かう。
どちらの反応も、根っこには「恐怖から身を守るための無意識の反応」があります。
つまり、「言うことを聞かせるために怒鳴っている」つもりでも、子どもたちは「学び」や「集中」のモードから外れ、「身を守るモード」に入ってしまいます。
まさに「恐怖が生む二つの選択肢」ですね。




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